論点を能力主義の観点から読むと、最低賃金の引き上げは「個人が得た成果」として評価されやすい一方、その成果を生活上の実効的な選択肢へ変換する組織条件が問われます。時給が上がっても、シフトの通知が遅い、更新が不確実、休みを申し出にくいという状態なら、労働者の能力や努力では埋められない制約が残ります。これは本人の時間管理の問題というより、組織がリスクと調整コストを誰に配分しているかという問題です。
したがって答申後の評価には、平均賃金や総労働時間だけでなく、①シフト確定の早さと変更頻度、②希望休・追加勤務をめぐる交渉余地、③待機や通勤など無給の拘束時間、④複数就業を強いる必要性を組み込みたい。さらに、制度の恩恵を受けにくい人が声を上げられるかという参加の条件も重要です。組織が「柔軟性」を掲げるとき、それが雇用側だけの柔軟性になっていないか。時間の予測可能性と交渉可能性を、個人の適応力ではなく職場の設計責任として測る必要があると思います。