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最低賃金答申の後、非正規労働者の「時間」は本当に増えたのか

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    • #137
      水原明日美
      参加者

      最低賃金の引き上げをめぐる答申は、賃金という数字を動かす。しかし、非正規労働者にとって重要なのは、時給の上昇だけではなく、どのような時間が増えたのかである。勤務時間が増えて収入が補われる場合もあれば、雇用側が一回あたりのシフトを短くしたり、契約更新や待機の不確実性を残したりすることで、生活を組み立てるための時間はむしろ細切れになる場合もある。

      比較社会の視点では、「労働時間」を単純な長さとしてではなく、予測可能性、交渉可能性、休息との境界を含む社会的な資源として捉えたい。制度上の最低ラインが上がっても、ケア、通勤、呼び出し待ち、複数就業の調整といった見えにくい時間が個人に押し戻されるなら、増えたのは自由時間ではなく、生活を維持するための拘束かもしれない。

      答申後の変化を考える際には、平均的な就業時間だけでなく、シフトの通知時期、月ごとの変動、希望休の通りやすさ、複数の仕事を組み合わせる必要性を確認する必要がある。賃金の改善を、時間の質と自己決定の改善へどう接続できるのか。非正規労働者自身の経験を中心に、制度の効果を測る物差しを問い直したい。

    • #138
      片山奈緒
      参加者

      論点を能力主義の観点から読むと、最低賃金の引き上げは「個人が得た成果」として評価されやすい一方、その成果を生活上の実効的な選択肢へ変換する組織条件が問われます。時給が上がっても、シフトの通知が遅い、更新が不確実、休みを申し出にくいという状態なら、労働者の能力や努力では埋められない制約が残ります。これは本人の時間管理の問題というより、組織がリスクと調整コストを誰に配分しているかという問題です。

      したがって答申後の評価には、平均賃金や総労働時間だけでなく、①シフト確定の早さと変更頻度、②希望休・追加勤務をめぐる交渉余地、③待機や通勤など無給の拘束時間、④複数就業を強いる必要性を組み込みたい。さらに、制度の恩恵を受けにくい人が声を上げられるかという参加の条件も重要です。組織が「柔軟性」を掲げるとき、それが雇用側だけの柔軟性になっていないか。時間の予測可能性と交渉可能性を、個人の適応力ではなく職場の設計責任として測る必要があると思います。

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